世界中が大絶賛『恋せぬふたり』アロマ・アセクの名作

本・映像

✔︎ アロマンティック《恋愛感情がない》やアセクシャル《性的欲求がない》というセクシャルマイノリティに関心がある

✔︎ドラマ『恋せぬふたり』が好き

✔︎『恋せぬふたり』の世界的な評価が気になる

✔︎ 英語のリスニング力に自信がある〜を鍛えたい(該当しなくても理解できる記事になって〼)

そんなあなたに届け✧

NHKドラマ『恋せぬふたり』は、アセクシャルな私の気持ちや考えを代弁してくれているように感じた。

文句のつけどころがなく、レビューが逆に難しい。

そこで英語圏で問題視されているアセク・アロマの描かれ方と比較することで、世界的にみた『恋せぬふたり』の希少性と重要性を説明してみようと思う。

😩アセク・アロマ作品への不満点

英語圏では、メディアによるアセク・アロマの模写への不満が目立っていた。

🥱 アロマ・アセクのキャラクターは思春期の若い年齢層(セクシャリティに気づき始める設定)なことが多く、アロマ・アセクを自覚して久しい人からすると物足りない(例:ネットフリックス・シリーズの『Sex Education』に登場するフローレンス等)。

😒 宇宙人などという設定で人間ではないことも多く、恋愛感情や性欲がないのは人間以下であるかのような印象を受けてしまう(例:『スタートレック』の登場人物たち)。

😮‍💨 アロマ・アセクをメインテーマにした長編作品が少ない(例外:『Loveless』アリス・オズマン著、2020年)。

😱 アロマ・アセクの登場人物がいても、作中に恋愛や性的模写が含まれると、不快に感じる当事者が多い。

💜『恋せぬふたり』の満足点&反響💚

一方『恋せぬふたり』は

✔︎ アロマ・アセクが主な題材

✔︎ 主人公がふたりともアロマ・アセク

✔︎ 登場人物たちの大半が成人のヒト

✔︎ 結婚や子育てが期待・強要される年齢層

✔︎ 思春期では経験しないような葛藤が描かれ

✔︎計8話を通してじっくり向き合っている

✔︎ 「大人になったらいずれ運命の人が見つかる」と、なだめられがちなアロマ・アセクたち。そこへ『恋せぬふたり』では、一時の迷いなんかではないと、自らを肯定した大人が登場。

✔︎ 「普通」とされている固定概念の滑稽さや危うさまで浮き彫りにしてしまう主人公たちの生き様が小気味良い

✔︎ 深く複雑で包括的な内容が、現実世界のアロマ・アセクたちの欲求不満要素を満たす

✔︎ 一方、一般的なコメディとして見れるキャンプさ(大袈裟で芝居がかったユーモア)もあるので、重くなり過ぎなくて見やすい

同作品のキャンプ代表と感じるのはカズくん(濱正悟)。コロコロ変わる表情が豊かで目が離せなかった。脇役ながら一番成長したのもカズくんという意外性も面白い。

「お陰で、完璧なアロマ・アセク作品を探す長旅は終わった」と脱帽するのは、アセクシャル啓蒙家で米国人のYouTuber夫婦「The Ace Couple」。

コメント欄には共感と感動と感謝のメッセージが寄せられている。

アロマ・アセクが初めて丁寧に描かれた作品と賞賛する書き込みは、アメリカ発の2ちゃんねる「Reddit」、映画紹介サイト「Imdb」、「Tumbler」などのSNSでもみられる。

Wikipediaには『恋せぬふたり』の英語ページの他、中国語、タイ語、カタロニア語のページもある。Koisenu Futariは海を越えて世界中の人に響いていると言っても過言ではないだろう。

🇯🇵日本でアロマ・アセクの名作が生まれた理由?

英語圏は日本に比べるとアロマ・アセクの議論が活発である印象を受ける。

英語が世界の共通言語であり、自己主張や議論をする機会が自然と増えるだけでなく、単純に人口が多いことも関係あると思う)。

議論が比較的に盛んでないの日本で、画期的なアロマ・アセクの作品が公開されたことは興味深い。

日本では議論や意見を小まめに発散する機会が少ないからこそ、行き場のない気持ちが静かに育まれ、多くの人が共感できる作品として爆発させる能力が発揮されるのかもしれない。

初めから風通しの良い社会であるに越したことはないが、そうではない環境下でも、普遍的なメッセージを届けられるという希望をもらった。むしろそうやって風通しをよくしてゆくのだと。

また創作にアロマ・アセクの当事者が数人「考証チーム」として携わっていたのにも納得。NHKの公式サイトから考証チームのブログが読め、背景の理解を深めることができる。

個人的にNHKには芳しくない印象(犯罪率の高さ、捏造、大事なことは報道しない等)を受けてきたけど、多様性を題材にしたこのようなドラマを作ったことで少し見直すこともできた。

賞賛しか見当たらない作品だが、唯一苦情があるとすれば、日本以外で観る方法が限られているということ。VPNやトレントや字幕を駆使すれば観れないことはないけど、ネットフリックスなどで気軽に観たいという意見が少なくない。

この作品が一つのきっかけになり、あらゆるマイノリティの声が届く作品が今後も国内外で益々増える予感がする。

♠️アセクシャリティと私

私が「アセクシャル」を自認したのは映画『正欲』がきっかけだった。

私も『恋せぬふたり』の主人公・高橋羽や児玉咲子と同様、機能不全家族出身だ。

世の中には、生まれながらアセクシャルな人もいるだろうが、一定数は「普通」を強要してくる環境へのアレルギー反応としてアセクシャルになったと思わざるを得ない。

またアセクシャルが人口の1%という数字にも違和感がある。最近までの私のように自覚できてない人が多いだけで、実はもっといてもおかしくない。実際、認知度が進み、最近では4%という見解もあるらしい。

社会で声が届かない人々の話をする場合、可視化できているのは氷河の一角に過ぎないと考えた方が現実的だと思う。

少なくとも世界中に同じような人々が存在する。でも全く同じ人はいない。私は私。あなたはあなた。それこそ「普通」なことではないだろうか。

🇺🇸アセク夫婦のレビュー(英語Podcast)

最後に「アロマ・アセクを完璧に模写した史上初の作品ではあるまいか?!」と絶賛するアセクシャルな米国人夫婦「The Ace Couple」のレビュー動画をおすすめしたい。

30分あるドラマの1話を、45分くらいじっくりかけて振り返りながら解説。

ラジオ感覚でドラマをもう一度、気の合う友達と一緒に観返しているような感覚が味わえる。

主に妻コートニーが物語を説明しているけれど、夫ロイスが時々挟む合いの手も的確でテンポが良い。

※ちなみにace(エース、発音は「エイス」)はアセクシャル(asexual)の英語発音「エイセクシャル」の略。

AseでなくAceと表記するのは、後者にはスペードのエースのように「最強」という肯定的な意味があり、既に存在する言葉としての親しみやすさもあるからだと思われる。

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