生きづらい人におすすめ漫画&コミックエッセイ

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生き地獄を彷徨ってきただけに、楽観的すぎる世界観にアレルギー反応が起きてしまう私が、興味深く読めた推しのエッセイ漫画などをブログ記事に蒐集してみました。随時更新していきます。

コミックエッセイ(実話)

母がしんどい/田房永子

過保護・過干渉な母★★★★★
毒親ブーム先駆け★★★★★

「親と一緒に居るのが息苦しい。でも決別するには罪悪感がある」
そんなあなたにこそ読んでもらいたい、元祖毒親コミックエッセイ!

・些細なことで突然キレて暴れ始める
・ブラジャーを買ってくれない
・アルバイトも学校行事も邪魔をされる
・喧嘩をしたら職場に抗議の電話

――これらはほんの序の口。
何もかも支配され続ける生活に限界を感じた永子は、母親と縁を切ろうと決意するが……!?

角川文庫

過保護・過干渉な母親に振り回される娘の精神的な負担。

これを漫画史上かつてない高解像度で描いている『母がしんどい』は、田房永子さんの実体験に基づくコミックエッセイ。

ベストセラーになったのも「なんともいえない苦しさ、私だけじゃなかったんだ」と多くの人の声にならない複雑な感情と共鳴したからだろう。

いわゆる「毒親」や「機能不全家族」を題材にした実話に基づく漫画の先駆け的な作品である。

他と一線を画す田房永子さんの心理模写は、類を見ないほど細やかで分かりやすく、期待を裏切らない。

しんどい母から逃げる!!いったん親のせいにしてみたら案外うまくいった/田房永子

罪悪感からの解放★★★★★
自己防衛★★★★★
毒親★★★★☆

「毒親」「母娘問題」解決方法の決定版。

自身の母親との葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』で、
「毒親」「母娘問題」を社会現象までにひきあげた漫画家の田房永子さん。

その『母がしんどい』のアンサーブックとして、
親から呪縛を解いていく過程を漫画化。

「この苦しさは親のせいだ」という気持を封印し、
生きづらさを抱えた毒親持ちの人たちにむけ、
経験者だからこその視点で、
その原理をわかりやすく解き明かし、
解決の糸口を見せてくれます。

小学館

虐待に遭い続けていれば、適切に自分を守ることも困難になる。逃げることは、生き延びるために、必要不可欠なこと。

相手が自分を生み落とした存在であっても、それは親の勝手であり、子供にはなんの義理もない。

加害から逃げるのは、生存本能であり、当たり前なことであり、罪悪感など感じる必要がない。

「母がしんどい」の田房永子さんが、幼少期から自分に問題があると刷り込まれてきたことを、母親の問題と捉え直し、距離を取ろうと試みる過程を描いた作品のお陰で、私は両親からの電話を一年以上無視できた。

虐待の罪を問い正したことて沈黙を破った後、動揺する両親の言動を兄弟の報告を通じて観察しながら5年以上、連絡できないように全方面でブロックしている。

私は両親の罪を代わりに背負うことを辞め、彼らが向き合いたくない現実を突きつけてきたので、その分、精神的な負担が減った部分もある。

キレる私をやめたい ~夫をグーで殴る妻をやめるまで~/田房永子

ゲシュタルト・セラピー★★★★★
トラウマ療法★★★★★
女のDV加害★★★★☆

『母がしんどい』の田房永子が今まで誰にも言えなかった深刻な悩み――それは“キレる”こと。
あなたも家族や彼氏にこんなことしてませんか?

・頭に血がのぼってヒステリーをおこす
・後先考えずに物を投げたり、破壊したりしてしまう
・泣き叫んでわめき散らしてしまう
・つかみかかったり、ビンタや肩パンチをしてしまう
・思わず子供を叩いてしまう
・イライラして暴言を吐いてしまう
・怒りが抑えきれず、裸足で外に飛び出したことがある

理性を取り戻したあとに毎回、自己嫌悪。
私って、本当にダメな人間なんだ…。
いいえ、違うんです。
あなたは傷つきすぎているから、キレてしまうのです。
キレることに苦しんでいた私が、穏やか生活を手に入れるまで――。

竹書房

恋人にキレてしまう自分をやめられなくて困っていた頃、タイムリーに出版され、読む前から自分のための本だと確信していたが、想像以上の変化をもたらしてくれた。

自分の感情をコントロールできない原因は、母親から受けてきた虐待に対して押し殺してきた怒りが、彼氏に爆発してしまうからだと思っていた。

本書に描かれているゲシュタルトセラピーを受けてみたら、押し殺してきたのは、幼児期より父から受けていた性被害に対する負の感情だったことに気づかされた。

精神論で終わってしまう本が多い中、本書はトラウマやインナーチャイルドを癒すために効果的な「対話」を用いた心理療法について知れます。

私の人生を変えた本トップ3のひとつであり、超絶おすすめな一冊。note記事でその効果を書いています:

ゲシュタルト療法の効果&『キレる私をやめたい』@田房永子さんhttps://note.com/twilighthues/n/nfd4871f62aaa

女(じぶん)の体をゆるすまで/ペス山ポピー

性別違和(ノンバイナリー)★★★★★
ジェンダー★★★★★
セクシャル・ハラスメント★★★★★

話題のジェンダー・エッセイコミック!上巻

単行本化希望の声が編集部に殺到した話題作!!
『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました』のペス山ポピー、
待望の新刊です!!

性別欄に“どちらでもない”があると安心する
トランスジェンダー(Xジェンダー/ノンバイナリー)のペス山さんが、
意気揚々と向かったアシスタント現場で直面した出来事…

それは雇用主でもある漫画家X氏からのセクハラだった。

「女の体に生まれたからこんな目に遭うんだ…」

自身が生まれもった体を恨み、漫画も描けなくなったペス山さんが
己の過去、友人、親と対峙しつつ、
「女(じぶん)の体をゆるすまで」を描いた、
話題のジェンダー・エッセイコミックが上下巻同時発売です。

【編集担当からのおすすめ情報】
自身の「女の体」に疑問を抱いた幼少期、
ミソジニーを内包するに至った学生時代、
性被害を受けまくる女友達との決別…

この漫画に描かれるペス山さんの過去を通じて、
誰しもが一度は感じたことのあるだろう、当時理由はわからなかったジェンダーにまつわる違和感と理不尽が、
オリジナルかつユーモア溢れる筆致で解き明かされていきます。

下記、15話のペス山さんのモノローグからの引用です。

「ずっと砂利道を裸足で歩いてるみたいだった。

痛くて歩けなくなって、そのことをとても恥じた。

しかし痛みを正面から実感して、
『痛い。』『靴が欲しい。』
こう訴え続けることで、私はやっと歩けている。

痛みをなかったことにしている人も、

そもそも痛みを感じない人も、一緒に歩いている。

『痛い。』『痛い。』『全員分の靴が欲しい。』

私は黙れない。

だから描くのだと思う。」

本作が、多くの読者の皆さまへ届きますように。
みんなで前に進めますように。

小学館

性別欄に“どちらでもない”があると、私も安心します。

自然な性別違和も、ジェンダーバイアス(性被害)で悪化する。 

己の性別に違和感を感じることと、セクシャル・ハラスメント(性被害)を受ける・加えること。

これらはジェンダーバイアスという共通する問題が根底にある。

ジェンダーバイヤスとは「女・男はこうあるべき」という社会的な固定概念のことで、個人の認識と必ずしも一致しない。

だから人間はその狭間で混乱し苦しむのだ。が、多様性が認められる社会であったら、性別に違和感を感じることも、そのことで苦しむこともないはずだ。性被害を受けたり・加えたりすることも減るだろう。

ペス山ポピーさんの自伝コミックエッセイ『女(じぶん)の体をゆるすまで』には、そんなことを考えさせられる。

Note記事(3,500文字)『女(じぶん)の体をゆるすまで』性別違和と性被害

娘が学校に行きません 親子で迷った198日間/野原広子

不登校★★★★★
健全な親子関係★★★★★

いまやクラスに数名は不登校児がいる時代。明日はうちの子の番かも・・・?全国の迷えるお母さんたち、学校に行けない罪悪感の中日々をすごしている子ども達に、読んで、知って、笑って、少しでもラクになってほしい。つまづきから、少しずつ力を得て立ち上がり、やがて学校に通えるようになった娘と、焦り、戸惑いつつも一緒に歩んだ母との198日間の日々を描いた実録コミックエッセイです。

KADOKAWA

学校に行きたくなくて悩んでいる学生や保護者が読めば、「無理して登校しなくても大丈夫」という心の余裕が生まれるはず。

主人公の娘が正直に「学校に行きたくない」と意思表示し、戸惑いながら寄り添う母親の間に見える信頼関係に感動した。

私は母親との信頼関係が物心つく頃には破綻していたので、羨ましくなった。

顔を叩き怒鳴る母がいる家になるべくいたくなかったからか、不登校やひきこもるという発想すらなかった。かと言って学校にも居場所はなかったけど。

不登校も苦しいと思うけど「家にいたい」と思えることが、どれほど恵まれているかという見方もできる。

作者のような母親がいたら私の人生、ここまで狂っていなかっただろうなと思わざる得ない。

私が描いたコミックエッセイに同書が登場します:
https://note.com/twilighthues/n/n109734c4d2cb

無職ですが子どもを連れて逃げました/原作まぁみ, 作画こたおん

DV夫★★★★★
シングルマザー★★★★★

無職ですが子どもを連れて逃げました|無料漫画(まんが)ならピッコマ|まぁみ こたおん
好き勝手夫から毎日のように浴びるDV、そして浮気!それでも病弱な私は夫に尽くす以外に生きる道はなかった。しかし、我慢ができず奴隷のような日々からついに逃亡!それには、私を奮い立たせるある出来事が…女性を勇気づける感動の体験マンガ! | ピッ...

外面だけが良く、男尊女卑なDV夫から逃げる持病持ちの母と幼い息子の実話。

毎回クリフハンガーが設けられるので、続きが気になって引き込まれます。

1ページに約3個のコマ割りが読みやすいのもいつも感心するポイントです。

ピッコマで先行配信されているネット漫画。

おうち性教育はじめます一番やさしい-防犯・SEX・命の伝え方/フクチ マミ, 村瀬幸浩

性教育★★★★☆
防犯★★★★★

3~10歳、自分の体に興味を持ったら始めよう。日々の会話が子どもを守る

子どもにどうやって伝えたら…が、マンガでわかる!

「なんでママは立っておしっこしないの?」と聞かれたら、
「知らないおじさんに髪をひっぱられた!」と子どもが泣いて帰ってきたら、どうしますか?
おうち性教育=子どもを守るための教育です―

自らが学校で詳しく「性教育」を教えてもらってこなかったママ・パパたち。今の学校ではさらに教える範囲が狭くなっています。その一方、幼児からネットを使い性情報に簡単につながることができる現在、子どもが性の対象になった事件を伝えるニュースも連日報道され「自分の子どもを被害者にも加害者にもしたくない」という漠然とした不安でいっぱいです。性教育を学ぶことは、実は「性犯罪の被害者・加害者にならない」「低年齢の性体験・妊娠のリスクを回避できる」さらに「自己肯定感が高まり、自分も人も愛せる人間になる」とメリットばかり!

では、いつ何から伝えるの? 世界では、5歳から(!)の性教育を取り入れている国が多く、3~10歳ごろの自分の体に興味を持ち始めた時が最も教えやすいタイミング。お風呂上がりに「おしり~おっぱい~」とふざけ始めたら、教えるチャンスです! 本書は、「うちにも赤ちゃんはくる?」といった突然やってくる素朴な質問への答え方から、性犯罪の被害者・加害者にならないための日々の言葉かけ、思春期に訪れる男女の心と体の変化まで、親子で一緒に学ぶことができます。
日々の家族の会話で子どもを守り、これからの時代を生き抜くための力を養う「おうち性教育」をはじめましょう。

KADOKAWA

性教育は、子供の心の成長や、性犯罪を予防するためにも、必要不可欠な教養。

言葉がわかり出した頃から、子供と情報共有するのがベスト。

けれど「体を大切にする」ということを大人が学んでいないと、子供と対話ができない。

「おうち性教育はじめます」は、性教育を学んだことがない殆どの大人でもわかりやすく基本を解説してくれている。

子供には以下の絵本がおすすめ:

愛と呪い/ふみふみこ

近親姦被害★★★★★
解離性障害★★★★☆
エネイブラーの母★★★★★

物心ついた頃には始まっていた父親からの性的虐待、宗教にのめり込む家族たち。愛子は自分も、自分が生きるこの世界も、誰かに殺して欲しかった。阪神淡路大震災、オウム真理教、酒鬼薔薇事件……時代は終末の予感に満ちてもいた。「ここではないどこか」を想像できず、暴力的な生きにくさと一人で向き合うしかなかった地方の町で、少女はどう生き延びたのか。『ぼくらのへんたい』の著者が綴る、半自伝的90年代クロニクル。

‎ 新潮社

主人公の愛子の体を弄る父親を、笑って見ている母親。

愛子が解離して、空中から自分を見下ろすシーンが印象的。

なぜ父親から守ってくれなかったのか。愛子が大人になってから母親を問いただした。

すると母親は「何度も離婚しようとしたけれど、ひとりでは育てられなかった、愛子を守るためには仕方なかった」と弁解した。

愛子を守るためには仕方がなかった?!守ってないじゃん。全く。

その後、母親に泣いて謝られ、ここでも愛子は取り乱す母親を気遣う言葉をかける。

どこまでも最低な母親だが謝っただけまだマシなのか、評価しずらい。

ただ世の中には私の母みたいに謝ったことなど一度もない毒親もいることが脳裏をよぎった。

漫画(フィクション)

奇子/手塚治虫

近親姦被害★★★★★
狂気★★★★★

復員後、GHQの秘密工作員として働く天外仁郎。久しぶりに帰る天外家は、人間関係が汚れきっていた。呪われた出生を背負い、運命にもてあそばれる奇子。地方旧家、天外家の人々を核に、戦後史の裏面を描く問題作!

手塚プロダクション

狂っている。
このような父親や母親、子供たち、家庭、昔からいたんだな。
想定内のはずなのに、苦しくなる。

私だけ年を取ってるみたいだ/水谷緑

ヤングケアラー★★★★★
毒親★★★★★
機能不全家族★★★★★

“家族のかたち”を守るため、あの日わたしは自分を殺した。親との関係に悩むすべての人へ――失われた感情を取り戻す、ヤングケアラーの実録コミック!

統合失調症の母、家庭に無関心な父、特別扱いされる弟、 認知症の祖父――ゆいは幼稚園のころから、買い物・料理・ そうじ・洗濯など家族の世話を一手に担っている。母親の暴力に耐えながら「子どもらしさ」を押し殺して生きるのに精一杯だった彼女の子ども時代と、成人してからの「ヤングケアラー」としての自覚。 仕事、結婚、子育てを通じて、悩みにぶつかりながらも失われていた感情を取り戻すまでの再生の物語です。

『精神科ナースになったわけ』『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』( 共著:斎藤環)ほか医療系コミックで累計25万部の著者が、2年以上の当事者取材から描きおろす最新作です。「ヤングケアラー」について理解を深めるコラムや、ヤングケアラー支援団体の紹介ページも収録。(※10代の当事者も読めるよう、総ルビとなっています)

文藝春秋

私の母が子供の頃、母親が家を出たっきり帰ってこなかったらしい。

「あの人は私たちを捨てたのよ」と言っていたと父が話したのを覚えている。

私は子供ながら、触れてはならない話題であることを察したので詳しいことは分からない。

私の母は短気で、ビンタしたり怒鳴ったり説教したり、黙って無視したりするくせに、いつの間にか機嫌が治っていたりする。大人ぶっているくせに、大人気ない。

幼い女の子、あるいは母のインナーチャイルドが怒っているように見えていた。

私が理不尽に怒られる度に、母のインナーチャイルドが、彼女の母親に伝えられなかった怒りを私にぶつけているんだなと解釈していた。

でないと辻褄が合わなかった。私は育児放棄に値する罪を犯したことなど一度もない。

精神年齢の低い母を、物心つく前から私はずっとそばで、支えていた。

家事育児の手伝いだけでなく、彼女専用のサンドバッグ、彼女の母親代わりになっていた。

本書にも、どうしようもない親の元に生まれてしまったばかりに、大切な幼少期を奪われている子供たちが登場する。

妻が口を聞いてくれません/野原広子

家事育児分担★☆☆☆☆
結婚後のリアル★★★★★
男尊女卑★★★★★

第25回手塚治虫文化賞「短編賞」受賞!メディアで大反響、夫婦の問題を掘り下げる賛否両論の話題作! 妻はなんで怒っているのだろう……。妻、娘、息子の四人家族として、ごく平和に暮らしていると思っていた夫。しかし、ある時から妻との会話がなくなる。3日、2週間と時は過ぎ、やがて会話のない生活は6年目に。家事、育児は普通にこなしているし、大喧嘩した覚えもない。違うのは、必要最低限の言葉以外、妻から話しかけてこないことだけ……。ウェブサイト「よみタイ」の大好評連載、衝撃の描き下ろし最終話を加えて待望の書籍化。

集英社

無意識のうちに馴れ合った人を傷つけていることが往々にしてある。

最も大切な人に対して最大の敵になっていることがある、大事なことに気づかさせくれる物語。

四コマ漫画の構成なのに、サスペンス要素が高いストーリーラインに引き込まれる。

明日私は誰かのカノジョ

売春★★★★★
毒親と縁を切る★★★★★
ホスト狂い★★★★☆

「一週間に一回、私は【誰か】の彼女になる」 

彼女代行として日々お金を稼ぐ女子大生と彼女に魅せられた男達の、恋愛のリアルを描くビターラブストーリー。第1巻は主人公の雪を偽の彼女としてレンタルした若きサラリーマン、壮太と雪の歪な恋愛模様を描く。あくまで客と彼らの理想の女を演じる代行彼女…二人の心の距離は果たして近づくのだろうか――

小学館

売春、整形、ホスト狂いなどにハマっている、心が病んでいる女子大生たちがオムニバス形式で登場する。

その背景には、複雑な家庭環境が見え隠れし、機能不全家族出身あるあるが満載。

あまりにもリアルに感じたので、作者の実体験なのかと調べたら、作者はいろんな人の経験から着想を得ているとインタビューで知って納得。

主人公は毒母と対峙し縁を切ったのも当然な流れ。

ただその後の終わり方に、詰めの甘さを感じてしまったのは私だけだろうか。髪を切って自分らしい人生を送っているという。

毒親と縁を切った後も、トラウマの後遺症が続き、日常的に生きづらさを感じているという方が現実的だと、私は実体験から痛感しているので、ラストに物足りなさを感じた。

人生そんなに甘くない。苦しみは形を変えて続くんだから、プラス思考な気休めより、警戒を促すような不穏な何かをラストに残して欲しかった。

血の轍/押見修造

過保護・過干渉な毒母★★★★★
マザコン★★★★★

「惡の華」「ハピネス」「ぼくは麻理のなか」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」など、傑作を次々と世に送り出してきた鬼才・押見修造氏が、ついに辿り着いたテーマ「毒親」!

母・静子からたっぷりの愛情を注がれ、平穏な日常を送る中学二年生の長部静一。しかし、ある夏の日、その穏やかな家庭は激変する。母・静子によって。狂瀾の奈落へと!

読む者の目を釘付けにせずにはおけない、渾身の最新作!!

小学館

美しく優しくて、過保護で過干渉で、長部静一のプライベートまで奪う悍ましい母親。

母親に対抗して欲しいけど、静一はどんどん母親の言うなりになって、最後まで残念な主人公。

それだけ母親に飼い慣らされた哀れな人間がこの世に作れらてしまったという悲しい現実が描かれているのかも知れない。

前半はハラハラさせられる展開だったが、終盤に近づくほど、退屈に感じてしまう。静一のうだつの上がらない人生を読者が体験できるような著者の意図的な作意なのだろうか。

最終話の「最期の会話」について、ネタバレ感想をNoteで書いています:

『血の轍』17巻。最終話の違和感と、最終ページの描き方|ぬうま(Pneuma)
⚠︎ネタバレ注意 清一がお母さんの介護をしながら最後を見届けて、死んだ直後から開放感を味わってるところや、 老人になって何年ぶりかに母親のことを思い出すも顔が思い出せなくなっているくだりなんかは、 同じ毒親育ちでも自分とは全然違う感覚の持ち...

氷の城壁/阿賀沢紅茶

人が苦手★★★★★
心理模写★★★★★

人と接するのが苦手で、他人との間を壁で隔ててしまう氷川小雪。高校では誰ともつるまずに1人で過ごしていたけど、なぜかぐいぐい距離を詰めてくる雨宮ミナトと出会い――? 孤高の女子・小雪、学校の人気者・美姫、距離ナシ男子・ミナト、のんびり優しい雰囲気のヨータ。どこかちょっとこじれた4人の、もどかしい青春混線ストーリー、第1巻!

集英社

登場人物の心理模写が、ここまで細かく描かれた漫画はこれまでに存在しただろうか。

スマホで読むことを意識した縦スクロール漫画「ウェブトゥーン」という形式のコマ割りや、オールカラーならではの表現も特徴の一つだけど、そういった技法を超越した面白さが根底にある。

単行本版も読んでみたけど、本作品の面白さの真髄は、キャラクターの感情や表情を丁寧に描いていること。

さらに、お互いと交流する中で起こる化学反応によって各々が少しづつ変化、成長していく姿が自然で、まるでドキュメンタリーを見ているようなリアリティーがある。

さらにさらに、各々の価値観を生み出した生い立ちにまで丁寧に触れていて、説得力があり、物語を立体的にしている。

主人公の氷川小雪は人と接すのが苦手で、頭の中で色々考え過ぎてしまうのだが、私もそういう性格なので、特に感情移入しやすいキャラクターだった。

Note記事『氷の城壁』で描かれる心の成長と、対等な関係性
https://note.com/twilighthues/n/n3a2adc30515f

私がわたしを売る理由/夏子久

パパ活★★★★★
売春★★★★☆
毒親★★★★★

パパ活女子って、ずるいですか。

都内の有名大学に進学した椿(つばき)は、両親からの援助がない中、奨学金とバイト代で学費と生活費を賄う、忙しい日々を送っていた。
そんな中、緊急事態宣言が発令され、バイトをクビになってしまう。慌てて他のバイトを探している中で見つけた「パパ活」の文字。
「お茶するだけで5千円から1万円…!?」甘い言葉に誘われて、アプリのダウンロードボタンに手を伸ばしてしまい――。

小学館

幸せな家庭で育ったら、好きでもない相手に自分の大事な体を売る発想も浮かばない。

搾取され続け、自分は大切にされるに値しない人間だと思ってしまうから、投げやりに体を売ってしまう。

どれだけ絶望しても、死ぬまでは食欲や睡眠を満たすために金がかかるから。頼れる人がいない人は。

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