魚田コットンさんのコミックエッセイ『母の再婚相手を殺したかった〜性的虐待を受けた10年間の記録』は、まるで自分の幼児期をなぞっているような感覚になる。育った環境が異なる点も多いのに、トラウマ症状の現れ方が似ていることが多い。改めて、自分の身に起きていた異常な反応は実に正常で、自分を性的に搾取した父親の言動が異常であったことを実感する。
異なる点(環境)
コットンさん | 私 | |
家族構成 | 母子家庭(母と姉) | 5人家族(両親と弟2人) |
初の性被害年齢 | 小学5年生(10歳頃?) | 4歳頃(盗撮は0歳から) |
短気+怒鳴る+暴力する人 | 義父 | 実母 |
猥褻の言動をする人 | ” | 実父 |
被害の記憶 | 時系列で覚えている | 悪夢だと信じ込もうとしたり、記憶は断片的で、封印されていた期間が長い |
加害者による正当化 | 性的虐待を「セックス」と露骨に言う | 「めごめご」という曖昧な言葉で母親と私をガスライティングして騙す |
猥褻媒体 | ケータイに何度も送る | 猥褻媒体専門店にいきなり連れて行く、SNSで「官能小説家」として接触してこようとする等等 |
放課後の生活 | 部活や友達と遊ぶ | 母の家事の手伝い、父の店で仕事など(遊べるのは週一のみ) |
性被害を受けた期間 | 10年 | 30年以上 |
などなど
似ている点(状況とトラウマ症状)
□熟睡中に性加害をされ始める(意識がない時に狙われる)
□性被害直後トイレに逃げる (私は尿意なんて全くなく、レバーを下ろしただけ)
□寝ぼけたふりして手を振り払う(現実であることを認めたくない)
□小5なのに頻繁におねしょをする(私は何故いつまでもおねしょしてしまうのか不思議だった)
□母が寝ている隣でも猥褻される(母の意識がない時に狙われる)
□大人になるまで誰にも話したことがない
□母親の幸せを壊したくないことが我慢の原動力(母のことは嫌いだったが、母を悲しませてはいけないし、離婚したら経済的にどうなってしまうのかという不安もあった)
□どの道信じてもらえないという絶望(子どもは軽蔑されていたので、何を言っても無駄と学習)
などなど
比較からわかる重要な点
両者の大きな違いとして挙げられるのは、コットンさんの義父からはあからさまな悪意を感じられ、私の父親からは悪意が感じられなかったことです(「可愛くてつい」というテイだったので、私はずっと混乱していました)。いずれにせよ、被害者としてはトラウマ反応を長年患うほどの恐怖体験であることには違いありません。
この漫画のスゴいところ
主人公が性被害を受けるまでの背景、その後の葛藤や成長がこの一冊にまとまっているところが、スゴい。
私の場合、性被害が物心つく前から始まっていて、父親からは性被害を受け続けていたが、暴力的だったのは母親の方で、父親と仲良くすることで自分の居場所を確保していたので、話が非常に複雑。記憶も断片的で、時系列には語れないし、一冊にはまとまらないと思っていて気が遠くなる。なので魚田コットンさんの語り方はできるものなら参考にしたい。
また、この一冊には納めきれないことを多く経験してきたのだろうと想像する。読みやすくするために、あえて色んなエピソードを省いたのではないだろうか。2024年に出版された『スカートの呪いが解けるまで 幼少期からの死被害が原因で女らしさ恐怖症になった私』はまだ未読なのだけれど、タイトルからして、共感マックスだ。
毒親マンガは数多くあるけれど、その中でも私の状況と一番近いのは『母の再婚相手を殺したかった〜』だと思う。一方で、私の場合は性虐待がより早く始まり、長く続き、分かりにくい方法で行われていた点や、回復まであらゆるトラウマセラピーを受け続けているにも関わらず、今もなお複雑性PTSDに悩まされているという点において個性が発揮されると思う。記憶の断片を拾いながら、一つの作品として自伝が完成するよう、今日も取り組みを続けようと思わせてくれる。
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